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探偵小説 マリアバックナンバー 第21話〜第25話 登場人物紹介ジャック天野 探偵 沢田久美 探偵助手(天野の事務所に居候) 井上夫婦 家出調査依頼人 井上幸太 家出少年 マスター 純喫茶<憩い>のマスター ヒロ 井上幸太の友人 東谷 井上幸太の先輩 渡辺翔 上に同じ 山本 下請けの調査員 シンジ ドクロの元リーダー ユキ デリヘル嬢 あらすじ大阪で私立探偵を営むジャック天野のもとに、ある日中学生の家出捜索の依頼人夫婦が訪れた。この依頼を発端に事件に巻き込まれるが…… 25話 そのホテルは地下鉄なんば駅を少し西へ入ったホテル街の一角にあった。若者好みに改装された周りのホテルと比べると、一昔前の外装が少し浮いた感じを漂わせる。 植え込みに隠れた正面玄関を入り、腰の高さにあるフロントの小窓から係りの中年女性が見えたが、一人で入るおれを見ても何もとがめようとはしなかった。 パネルで適当な部屋を選び、2階の203号室に入る。すぐにさっきの電話にリダイヤルした。 「さっきユキを指名したもんやけど、203号室やし。あとどれくらい?」 「30分くらいで行けます」 さっきの男が言った。 「ほな、待ってるし頼むでぇ」 おれは電話を切るとバスに入り、シャワーを浴びた入った。ラメ入りの金色の大きくいびつな形の浴槽と、壁に規則正しく並べて貼られた10cm四方の水色のタイルとのコントラストが、このホテルの歴史を物語っているようだ。 10分ほど冷水のシャワーを頭からかぶり、バスタオルで適当に体を拭いて、再び服を着た。汗で粘ついたパンツとシャツには閉口した。 ドライヤーで髪を乾かしていると、ドアをノックする音が聞こえた。料金精算用の小窓を開けると、 「ユキです」 と、若い女の声がした。 そのままドアを開け、部屋に招きいれた。 「お客さん、シャワーまだですか?」 「うん」 「ほな、先に入ってええ? もう暑うて汗だくやわ!」 「おお、そうか」 女はなに遠慮することなくバスに入っていった。おれは冷蔵庫の中から缶ビールを出して、シャワーの音を聞きながら、一気に飲み干した。 女は5分ほどでバスを出て、バスタオルを巻きつけて出てきた。 「お先ぃ〜。まだ入れへんの?」 「うん、ちょっと聞いたいことあんねんけど」 女の表情は一気に硬くなり黙りこんだ。恐らく、日頃想定しているよからぬ緊急事態に備えての対処法を思い浮かべているのか、これから先の展開を予想しているのか、黒目が小刻みに左右に往復し、焦点があっていない。 「歳ナンボ?」 女は完全に固まっている。視線はおれの胸元辺りで固定されたまま、黒目だけが左右にゆれている。 「警察ちゃうから」 少しは安堵したのか、目を合わせた。 「倍払うし、協力してくれへん?」 女からの答えはなかった。いやな空気が流れ、沈黙を破って、いきなりドアが開き、三人の若い男が部屋になだれ込んできた。 「どこの回しモンや! おんどれはっ!」 先頭を切って入ってきた、スキンヘッドで眉毛もない、まさしくタコ坊主を地で行くような少年が、おれのむなぐらを掴んで興奮気味に鼻先でつばを飛ばした。 とは言うものの、甘いジュースの匂いの口臭が迫力を半減させていた。 おれはむなぐらを掴む男の手首をとって、急所を締め付けながら男の背中まで回し、体ごと壁に押し付けた。 「どこの回しもんて、お前はどっから来とんねん」 顔を歪めて壁に張り付く兄貴分を見て、一見して中学生とわかる連れの二人はその場に立ち尽くしたままマネキンのように固まる。 「警察とちゃう言うてるやんけ。ちょっと話聞くだけや」 廊下を通りがかった清掃係のおばさんが怪訝な目で室内を見回した。ただならぬ雰囲気に慌てて走り去る。 おれは壁に貼り付く男の背後から金蹴りをくらわし、入り口近くで呆然と成り行きを見ていたユキの手を取って、ホテルを全速力で脱出し、3軒隣のラブホテルにチェックインした。 このページのトップへ 24話 「よう知ってるな」 シンジはにやにやと笑っている。 「これでも一応探偵やしね。あれって何? 誰?」 「わからん」 「ほなどこまで知ってんの?」 「……どこまでっちゅうか、最初はワシも渡辺のオカンか姉ちゃんと思っとったんや。せやけど……」 「せやけど何?」 「向こう(ドクロ)抜けてウチへ来たヤツにも色々聞いたけど、何もわからんみたいやな」 「誰も見たことないんか?」 「そうや」 「ダミーちゃうんか?」 「そうかもわからんけど、渡辺は『あれ(マリア)がおるからウチは守られとる』 と言うとるらしいけどな」 マリアがいるから組織が守られている……。 「スポンサーか?」 シンジに笑みは消え、うぅん、と考え込んだ。 「そうでもないかな……。スポンサーやったら何もシャブ売ったりせんでもええやろ?」 それもそうだが、しかし、聞けば聞くほどヤツらの動きは謎めいている。おれとしては幸太が狙われていたわけさえわかればクライアントにも顔が立つのもだが。 「最近、渡辺とは会ってないんか?」 「この間、御堂筋の大丸の前でみたわ。ベンツに乗っとった」 シンジは少し不機嫌な顔をして吐き捨てるように言った。 「金持っとんにゃなぁ」 「そらボロいわ」 「やっぱシャブか?」 「それと風俗やろな」 「店やってんの?」 「ファッションヘルスとデリヘル(出張ヘルス)」 シンジが言うには知ってるだけでもミナミ界隈で10店舗のヘルス店、デリヘルに関しては数はわからないが相当数の店舗(窓口)を持っているらしい。 「儲かってんの? どこもアカンっていうけどな」 「儲かってるやろ。女が若いの多いらしいしな」 「ふぅん、そんなもんか?」 「そら、高校生とか中学生使ってるんやからオッサンは喜ぶわな」 「あぁ? それ捕まらんの?」 「せやからおかしいっちゅうてんねんや」 渡辺が経営するデリヘルにおいては若い女が接客の中心であると言う。また、そのサービス内容が過激なのが客にウケ、ミナミ界隈では常連客はほぼ独占状態であると言う。 しかし、中学生まで動員するとは恐れ入る。 「もしかしたら小学生もおるかも知れんで」 「そらないやろ」 「いや、わからん。ワシ二回ほど呼んだけど、2回とも中学生やで」 聞くだけで気が滅入りそうな話だ。 「どこでそんなヤツを引き込むんかな?」 「嘘かホンマか知らんけど、女の子は家出してきた言うとったけどな」 おれはシンジから渡辺が経営するデリヘルの、いわゆるピンクチラシと、ファッションヘルス店の某嬢の名刺を預かり、<パル>を出た。 携帯の時計を見ると、時間は夜10時を少し回っていたが、早速、シンジから預かったデリヘルのチラシに印刷されている番号に電話をかける。 「はい」 若い男が出た。 「ユキ頼みたいんやけど」 ユキとは、シンジの相手をした女だ。 「はい、わかりました。ただいま予約が入ってますので1時間後になりますがよろしいですか?」 「ええでぇ。難波のキューピットまで来て」 「わかりました。お部屋に入られましたら、再度、お電話ください」 声の調子や口調から察するに高校生くらいか、もしかするとそれ以下かも知れない。中学生の女を風俗嬢にしてるくらいだ、当然男も使うだろう。 おれは難波のラブホテルキューピットに向かった。 このページのトップへ 23話 相合橋を北へ渡った所にその店はあった。 <麻雀パル>―――。 いかにも30年は営業してそうな佇まいの店舗兼住宅で、外から見た目には敷地面積30坪弱といったところだ。薄暗いアーケードの中で、一際印象の薄い、くすんだ店構えだ。 木の枠にすりガラスが入ったドアを押すと、一見して店内が見回せた。電動麻雀宅が6台、手前のカウンターに若い男が座っていた。客は一組、一番奥の雀宅を3人で囲み、雰囲気的に常連客であると思われる。 「お一人ですか?」 カウンターの男が声を掛けてきた。 「いや、客とちゃうんや。マスターいてるか?」 「どちらさんですか?」 男の表情が少し曇り、こころなしか眉間にしわを寄せた。 「匿名希望。取り次いでもうたらわかる」 男はおれの顔を睨みながら、すごすごと店の奥にあるドアの中に入った。 ぼそぼそと声が漏れ、ドアの真中にある羊羹大の小窓が内側に開き、店の様子を中から窺っている。 さっきの男が出てきた。 「どちらさんやろ?」 今度は少し高圧的な口調だ。 「いや、ミナミ署の方からな……」 男の表情にスッと緊張が走り、店の奥の客の手が止まった。 「手入れちゃいまっさかい」 客に申し訳ない気がしたので、右手を挙げて愛想笑いを浮かべ、心置きなく開帳を続けるよう促した。 再度奥のドアが開き、男がこちらに一礼して「どうぞ」と言った。別に騙すつもりは無いが、さっきまでミナミ署にいたのも事実だ。 奥のドアに入ると、隅の立派なデスクの横に、もう一人男が立っていた。年の頃は22〜23歳、身長は170cm前後の中肉で、細くつりあがった目と、とがった鼻先に特徴がある男だ。 「アンタがシンジか?」 「そうやけど。警察が何か用か?」 男は不機嫌な様子だ。こんなところで正直に身分を明かすと、とんでもないことになりそうな事は容易に予想できる。 「今朝の道頓堀の変死事件の事やけどな。何か知らんか?」 おれは、デスクの前にあるソファに腰掛けながら横目で男の表情を窺った。特に変化は無い。 「さぁな。ガキの喧嘩ちゃうの?」 「そうでもなさそうなんや。ホトケからシャブが出てきてな。何やきな臭い感じなんや。『ドクロ』いうて知っとるやろ。そこのヤッちゃ(ヤツや)。アンタんとこの敵(かたき)やったなぁドクロは?」 男は無表情でおれの話を聞いていた。 「で、それが何でワシと関係あんの?」 タバコをふかしながら向かい側のソファーに男が腰掛けた。 「よういざこざ起こしとるらしいやん。何か知ってたら教えて欲しいなぁ、と、思て」 「知らんなぁ」 男はそう言って深くソファーにもたれかかった。お互いの目を見つめ、ほんの一分ほど沈黙の時間が続いた。 「ドクロのガキからシャブ出てきたんやったら、挙げてもらわなあかんなぁ」 男が嫌味混じりに言った。 「なんで挙がらんにゃ?」 「なんでて知らんがな。アンタらが能無しなんちゃうん?」 「なぁ……」 おれはトボケて頷き、シンジは呆れ顔で一つため息をついた。 「そらそうと、渡辺の事は知らんか?」 「名前聞くのも胸くそ悪いっ」 吐き捨てるように男が言った。 「アンタも前はドクロの頭やっとたんやろ? 何でクビになったんや?」 「クビちゃうがな。渡辺のガキがワシの車ん中にシャブ仕込んでチンコロしよったんや。(拘置所から)出てきたらアイツが乗っ取っとった」 「クーデターか」 おれはジャケットの内ポケットから名刺を出して男の前に差し出した。男は不思議そうな顔で名刺とおれの顔を交互に見るように視線を動かした。 「探偵? 刑事ちゃうん?」 「協力してくれへんか?」 「何を?」 男の緊張が解けたのか、表情が緩んだが徐々に怒りのようなものが込み上げてきているようにも映った。 「そのガキの殺人容疑でさっきまで取調べられとったんや。元々殺された子がおれのターゲットやったんやけど、自宅から寝込み襲われて拉致られてなぁ」 「鈍臭いのう」 少しキレかけたが大人としての理性で感情を抑えた。 「で、何を協力せいっちゅうんや?」 生意気そうな顔をおれのほうに近づけて男が言った。 「マリアて知らんか?」 男の顔に余裕と取れる笑みが広がった。 このページのトップへ 22話 「ちょっと時間ええ?」 「いいですよ。ちょうどバイトの子も来たし」 健は携帯電話で店の若い衆に事情を伝え、ソファーに座った。 「渡辺てどんなヤツ?」 缶ビール3本テーブルの上に置き、とりあえず素朴な質問から入った。 「ゴンタですわ」 ゴンタとは大阪弁で“不良(少年)”とか“やんちゃ(坊主)”と言う意味だ。 「どの程度?」 「かなり程度悪いですね。どっちか言うと暗い不良ですわ」 「暗い? ほな明るい不良っちゅうのはどんなん?」 「ワシみたいなんですわ」 と、健は誇らしげに胸を張った。白い歯がのぞく笑った口元がかわいい。 「どこがちゃうねんな?」 能天気に笑う健につられて、おれも山本も笑ってしまった。 「全然ちゃいますやん! ワシら学校出てから毎日汗水流して働いて、何とか世間に迷惑かけんと細々と生きてますにゃで」 (細々と……) 「ところがアイツは、自分より立場の弱い後輩を学校出てからも引っ張りまわしてお山の大将気取りですわ。何やってっか知ってます?」 「シャブか?」 「それもやってるけど、ウリ(売春)もやってるし、タタキ(強盗)に火つけ(放火)、引ったくり、車上荒し、何でもありですよ」 まるで犯罪のポータルサイトみたいなヤツだ。健が言うには、それらすべての犯罪をすべて配下の少年少女にさせて、自らは決して手を染めないと言う。 「けどね、一回も捕まらないんですよ、誰も。みんな知ってるのに、なぜか誰も挙げられないんですよねぇ。不思議ですわ」 そう言えば、今日の刑事も同じような事を言っていた。挙がらない、と。 「チンコロ(密告)したったらええんちゃうの?」 「いや、何回かやられてるでしょう。でも、ダメみたいですねぇ」 「何回かて、誰がやってんの?」 「アイツのタメ(同い年)で、ドクロの前の頭やっとったシンジっちゅうのがおるんですわ」 「シンジ。同級生か?」 「そうです。隣の中学やったんですけどね。そいつが道頓堀の相合橋のはたで雀荘やってるんですけど、そいつのグループとしょっちゅう揉め事起こしてます」 「何の揉め事?」 「さぁ、それはわかりませんけど、縄張り争いかなんかちゃいます?」 「ヤクザ顔負けやなぁ」 黙って聞いていた山本も呆れ顔で苦笑しながらそう言った。 「とにかく渡辺に頭が替わってからからですわ、ドクロがエグなったんは」 「それまでは?」 「それまでは10人くらいの暴走族グループみたいな感じですわ。まぁ、昔で言う愚連隊っちゅうんですか、そんな感じで、多分シャブもやってなかったと思うし、みんな一応ちゃんと働いてましたからねぇ、ドカちんとかで」 健が言うには、ここ1〜2年でがらりと組織が変貌したと言う。さらにあれも聞いてみた。 「マリアって知らんか?」 「マリア?」 健は顔をしかめた。 「どうもおれが探った範囲では、渡辺よりマリアっちゅうヤツの方が偉いさんみたいなんやけどなぁ」 「さぁ、聞いたことないですねぇ」 「そうか。そのマリアっちゅうのが陰で渡辺とかペーペーを動かしてるみたいで、アイツら的にはめちゃめちゃ怖い存在らしいで」 「なんでそんな事知ってはんの?」 「今朝、道頓堀川で中学生の死体上がったん知ってる?」 「はぁ、はぁ。さっきラジオで言うてましたわ」 「あれがな、昨日までおれのターゲットやってんや。家出調査の」 神妙な顔つきで聞き入る健に、殺された幸太がドクロのメンバーだった事、警察が連行したドクロのメンバーがおれが犯人だと警察にウタった事など、一連の出来事を説明した。 「なんで殺されたんやと思う?」 健に意見を求めた。 「口封じですかねぇ……。目ぇ覚めるまでにガラ押さえたかったんでしょうね」 「何の口封じや?」 そう聞くと、健は答えに窮したが、おれもその先の答えは想像も出来ない。 小一時間は話したろうか、健の携帯電話が鳴り、忙しくなってきたので戻って欲しいとバイトに急かされ、慌てて事務所を出て行った。 「どないしますか?」 ソファーに深く体を沈め、体の痛む個所を押さえながら苦しそうに山本が言う。 別に動く必要もないが、健が言っていたシンジのことが頭から離れなかった。 「ちょっと出てきます」 おれは山本にそう告げ、事務所を出た。 このページのトップへ 21話 これこそあっという間と言うにふさわしいほど、目を閉じて、次の瞬間目を開けるとおれの事務所の前に到着していた。 胸のポケットから汗で湿った千円札を取り出し、運転手に渡す。タクシーを降りると、おれには珍しく足がふらついていた。頭の重量の重さを首で感じながら、フラフラとマンションに入り、事務所のドアを開けた。山本がソファに寝たままだ。 この男も相当弱っているのか物音でも起きてこない。 ソファの前を横切ると、影で反応したのか「うぅ……」と小さなうめき声を上げて目を開けた。 「起こした?」 山本は手のひらで顔を覆うように撫で、瞼をうっとおしそうにしばつかせながら上体を起こした。 「さっきの誰ですか?」 時間の経過が掴めないのだろう。もう夜の7時になろうとしているのに、昼前におれが引っ張られたことを今しがたと勘違いしているようだ。 「しぼられましたがな」 「誰?」 「刑事ですわ。ターゲットが死んだんがおれとどう関係あんのか知らんけど、先に捕まってた若い衆がおれが怪しいとか何とか言うたみたいやわ」 「そうなんですか」 「山本さん、今朝、久美にどつかれたって言ってたでしょ? あれってホンマ?」 「う〜ん……。どつかれて倒れる前に後ろをチラッと見たら、久美さんが立ってたような記憶があるんですよね、なんとなく……」 と言うことはアイツはあっちの人間か。しかし、突然敵に回られるような憶えもない。 「どうなってるんでしょうね?」 山本の素朴な疑問には「さぁ」と、彼と同じように首をかしげるしかなかった。 とりあえず、事の成り行きも今イチ把握できていないので、クライアントに電話するが、留守番電話になっていた。 受話器を置くと、今度はベルが鳴った。2回目のベルで受話器を上げる。 「健です。マンションの前に面パト停まってますけど、ジャックさんとちゃいます?」 ガード下のたこ焼き屋の健だった。 「あぁ、そうや」 ひつこいヤツらだ。泳がせば尻尾を出すとでも思ってるのだろう。 「悪いけど、四人前を事務所と三人前をその面パトの兄ちゃんにおれからの差し入れや言うて出前してくれる?」 「了解。毎度おおきにっ! ほな、あっちはでき立てのホカホカ持って行っときま〜す!」 腹ごしらえでもしないことには、どうも頭が回らない。冷蔵庫から缶ビールを2本出し、お互いの渇いた喉を潤した。 山本が「もう一つ理解できないんですが」と前置きしながら、 「何でぼくが襲われたり、ターゲットが死んだりするほどの事件なんですか、これは?」 と、首をかしげて言った。 「こっちが聞きたいですわ」 おれも苦笑した。もとはと言えば、シャブ中のターゲットが始まりだ。一つ一つ思い出しながら、ここまでの経過を山本に説明した。 ひと通り説明したところでインターフォンが鳴った。開いてるよ、と、声をかけるとタンクトップ姿の健がたこ焼きを持って入ってきた。真っ黒に日焼けした顔とガタイを見るだけで元気が出てしまう。 「毎度っ! 面パトのオッサンびっくりしてましたわっ。よろしゅう言うといてって。何かあったんですか?」 「何かどころっちゃうんやっ! あっ! そうや健ちゃんはこの辺の出とちゃうんか?」 「この辺もこの辺、めちゃめちゃジモティでっせ」 「ほな『ドクロ』って知ってるか?」 「あれでしょ、四ツ橋んとこの」 「よう知っとんなぁ」 「あっこのリーダーの渡辺っちゅうのがおれの後輩ですわ」 (ほぉ……) この物語は完全なフィクションです。登場する人物、団体等の名称はすべて架空のもので、実在する人物、団体等とは何ら関係ありませんので、御了承下さい。 このページのトップへ |
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